◎第一織物エピソードファイル - 密度と通気性の共存する、新たな領域へ。

EPISODE #02

パタゴニアとの出会い。そして条件。

DICROSを擁する私たちに転機をもたらしたのは、ひとつの出逢いだった。
米国のアウトドアアパレルメーカー・パタゴニアから、生地の開発を依頼されたのだ。
ただ、当然、簡単ではない。厳しい条件が目前に並べられた。
ポリエステル100%、ストレッチ15%以上、通気性3cc/cm2 sec未満
しかも肌触りを考慮して作ってほしいということだった。

最初に、国内の各合繊メーカーが持つ
既存のストレッチヤーン(糸の伸縮性)製品を用いてテストを実施した。
ただ、織物自体があまりに高密度のため、
平織でも綾織でも全くストレッチ性は得られずに終わった。
次に、もう少し密度を落としてテストを展開。
平織より綾織に反応があった。中でも2/2ツイルの際に、
若干のストレッチ性が確認できたが、もちろん充分ではなかった。
「もう、ストレッチ性に富んだ糸を開発するしかない。」

ぶつかった、バランスの壁。

まさに試行錯誤を繰り返しながら糸の開発を行った。
その中で判明したのが、コンジュゲート* タイプのストレッチヤーンよりも、
高巻縮(強度のちぢれ)の原糸のほうが、
高密度織物の場合はストレッチ性を獲得できるということ。

早速、高巻縮原糸を用いて2/2ツイルの組織で開発を行った。
だが、通気性とのバランスが非常に難しい。
密度が低いと、ストレッチ性は良いが、通気性が高すぎる。
逆に、密度が高いと、通気性が低くても、ストレッチ性が悪い。

ピンポイントで密度を決める。

解決法としては、一本ずつの密度を上げていく原始的な方法しかなかった。
それは、その都度、染加工の結果を待たなければならず、膨大な時間を要する。
求められるのは、忍耐力。そして、ピンポイントの密度決定であった。

その後、更なる開発が行われて、
よりストレッチ性の高いコンジュゲートタイプの原糸も開発され、両方の併用となっている。
経験の積み重ねにより、ある程度の密度範囲は設定できるが、
最終的には、実証による開発が決め手となっている。

*コンジュゲート:二つ以上の異なった成分を、混じらないように貼り合わせた形に紡糸し、左右の熱収縮率の差を利用して、熱処理により捲縮性(繊維のちぢれ)を生じさせた合成繊維のこと